ぜんまいぷぺぶろぐ

嘔吐の国の姫であり人形

Hくん

Hくんは、小1のときはアンパンマンマニアだった。

でも小1でアンパンマンが好きというのは、幼稚扱いされてしまう。

Hくんは鼻くそを食べる。やたらと食べる。みんなが汚いよと言うと「おいしいのに」と言う。

Hくんは変わり者扱いされてしまう。

そしてみんな、Hくんを触った手で他の人を触り菌をうつす遊びをはじめた。

 

進級するにつれて、Hくんの趣味はコロコロコミックに移行する。

ドラえもんロックマンなどが彼のヒーローになる。

独特な勢いのある話し方をし、字が壊滅的に下手で、勉強もできなかった彼は、なおも鼻くそを食べる。

雪虫がつくのを異様に嫌い、1人で歩きながら「くるなっくるなっ」と雪虫を追い払う姿を覚えている。

下級生にバカにされているところも見た。

でも誰も注意しなかった。

一度教室でどういう経緯か忘れたがパンツとズボンをおもむろに脱いだことがあった。

すぐに穿きなおしたが、みんなドン引きした。

どういう経緯か忘れたけど突然「ぼくは女の子同士が裸で抱き合ってる絵が好きだ」というような事も授業中に言い放った。

多分、インターネットをやっていたのだと思う。

 

そして高学年になったころ、Hくんはガンダムに出会う。

平成生まれだけどファーストガンダムを見たらしい。

そこからHくんは突然みんなにガンダムクイズを出し、「しらない」と答えると「ええぇえ?しらないのおぉおお?」と大げさに呆れるので、みんなの反感を買った。

担任教師が宇宙戦艦ヤマト好きで、とある目的のためにテレビ版全話を見せる授業が始まると、Hくんはヤマトも大好きになる。

夏休みの自由研究でヤマトの模型を作ってきたので、みんな素直にすごいと褒めた。

校内放送で、低学年の子が話す声が放送されたりすると、Hくんは貴婦人っぽい感じで「まぁ、かわいらしいこと」と言うのがお決まりのパターンだった。元ネタわからず。

 

私は小学校6年間、Hくんと同じクラスだった。

中学1年生の時も、同じクラスになった。

Hくんの前の席に座っていた時、背中に違和感を感じた。

指だ。Hくんの指が私の背中を押している。

指が離れたかと思うと、今度は押されてた所が熱い感じがする。

息だ。Hくんが私の背中に向かって近距離で熱い息を吹いている。

こういう時どういう反応すれば良いのかわからなかったので、スルーした。

うしろから「ぜんぜん気づいてない」と小声で聞こえた。

 

Hくんがある時クラスで問題になった。

クラスの、今で言うとちょっとにちゃんねらー基質な感じの男子と言い争いになったのだ。

クラスで会議になった。

先生はHくんに「けじめつけろ」と言った。

Hくんは「けじめってなんですかぁ」と言った。

この発言にクラスはどよめいた。

そういえば誰もけじめの意味をよく知らなかった。

次の日、同じクラスの寺の息子が辞書でけじめの意味を調べて発表した。

それでもHくんはけじめをつけることはなく、今まで通り生活した。

その後は私は不登校になったので、Hくんが引っ越したというのを風の噂で聞いた。

 

今考えるとHくんは、自閉症かなにかだったのだ。いや、みんな当時からうすうす気づいていただろう。

でも学校ではHくんについて説明する事をしなかった。

自閉症の子供に一方的に「けじめつけろ」は酷じゃないかなぁと思う。もっと具体的に指導すれば良いのに。

 

この間、自閉症スペクトラムサヴァン症候群の医師のドラマをやっていて、Hくんを思い出した。

ドラマの主人公は「ピュア」に描かれるが、現実の自閉症は、どうかな。

 

小中の頃はほかに軽度の知的障害をもつYくんも同学年にいた。

Yくんにたいしても、学校側は説明なし。

ただ、校長先生は私たちの学年に「どんぐりの家」を読めと言った。図書室に全巻あった。

でも「どんぐりの家」を読んでも、これを読む事がなにを意味するのか、わかる生徒はいなかった。

結びつかなかった。

 

中学の時に塾で先ほどのにちゃんねらー男子がYくんの事を「頭のおかしい人」と言い放ったのを聞いて、無知って怖いなと思った。

 

みんな、大人になれたのかな。

 

 

 

それにしても私はHくんの事を覚えすぎているなぁ。

ものすごいインパクトのある子だったからなぁ。誰も聞いてないのに自分の趣味のことを授業中でもばんばん話し出すし。